将来の認知症リスクや、亡くなった後の相続に備えて、家族で話をしてみませんか?
江戸川家の夫婦(A男・B子)と司法書士事務所に勤める息子(H介)の会話を通じて、元気な今のうちにできる準備について考えてみましょう。
医療技術の進歩した現代では、90歳、100歳を超えて長生きすることも珍しくなくなってきました。長寿化の進む一方で、個人差はありますが、加齢に伴い、法律上の判断能力が低下したり、会話や文書によるコミュニケーションが以前より難しくなってしまう場合もあります。
厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によると、2025年には、日本国内で認知症の患者は約700万人(約5人に1人)にのぼると推計されています。
また、高齢者に限らず、不慮の事故や突然の病気で、財産の所有者が若くして亡くなられるケースもあります。
家族が集まる機会には、万一のことがあった場合に自分の財産をどうしたいのか、希望を話し合っておく必要があるかもしれません。
…とは言っても、いきなり財産の話を切り出すのは難しいですよね。
いきなり遺言や相続の話題に触れるのではなく、本人や親族の現在の生活の話から始めると、少しはスムーズかもしれません。
ここでは、江戸川家の夫婦・A男とB子と、司法書士事務所に勤める息子・H介との会話を覗いてみましょう。
最近、C男お義兄さんが入院したって聞いたけど本当?
ああ、本人は「すぐに退院できるから、そんなに心配しなくて良い」と言っていたよ。
しかし、C男兄さんもこれまで何度か大きい病気をしているからな。。。
C男達には子供がいないから、面倒を見れるのは奥さんのD子さんしかいないけど大丈夫かしら。
C男兄さんも歳を取ってきたしな。。。
あまり考えたくはないけど…万一、いまC男兄さんが亡くなったら、相続は大丈夫だろうか。
なあH介、お前司法書士事務所に勤めているんだから、こういった話に詳しいんじゃないか?
C男おじさんが亡くなった場合の相続か。。。まずは誰が相続人となるかを確認する必要があるね。
えっと。。。、もちろんD子おばさんが配偶者としてまず相続人となるんだけど、兄弟姉妹も相続人になるよ。
C男おじさん達は子供がいなくて、じいちゃん・ばあちゃんも既に他界しているからね。
兄妹ってことは俺も相続人になるのか。
もう一人の兄は5年前に亡くなっているんだがその場合はどうなるんだ。。。?
相続人となるべき兄妹が先に亡くなっている場合は、その子供、いわゆる甥(おい)や姪(めい)が相続権を引継ぐよ。
これを「代襲相続」(だいしゅうそうぞく)と言うんだ。
さすが詳しいな。
。。。そうなると、亡くなった兄の子も相続人になるということか。
あの子は、ここのところ家族でも連絡がつかない状態らしいが。。。
そう言われてみれば、ここ最近顔を見た記憶がないね。。。
あと、俺たち兄妹の中でも、妹は最近、かなり忘れっぽくなっているみたいだな。。。
軽度の認知症かもって言ってたね。。。
いざという時に、関係者の皆さんからハンコを貰ったりできるのかしら?
なんだか、相続手続きが大変になりそうね。。。
確かに、遺産分割がうまく進められないリスクがありそうだね。
家庭裁判所で代理人を立てたり、許可を得たり、色々と手続きが面倒になるかもしれない。
妻のD子さんも高齢だし、C男兄さんが亡くなった後でそんな複雑なこと対応できないだろう。
H介、何か良い対策は無いのか?
そうだね。。。C男おじさんの場合は、今のうちに「妻・D子へ全財産相続させる」という趣旨の遺言書を書いておけば、面倒なことにはならないと思うよ。
でも前にテレビで見たけど、遺言書で全財産を相続しても、他の相続人から「遺留分」っていうのを請求されて揉めることもあるんでしょ?
遺留分で揉めるケースというのもあるんだけど、C男おじさんの場合には気にしなくて良いと思うよ。
実は、兄弟姉妹が相続人の場合には、遺留分は無いんだ。
なので、C男おじさんの場合は、兄妹からの遺留分請求を気にせずに遺言書でD子おばさんへ全財産相続させることができるね。
俺は遺留分があっても、そもそもD子さんへ請求するつもりなんてないぞ。
C男兄さんの遺産なんて期待していないし、妻のD子さんが相続してくれればそれで良い。
ふふ。
別にあなたを疑っている訳じゃありませんよ。
あと、C男おじさんに遺言書を作って貰った方が、父さんにとっても楽になるよ。
遺産分割のために実印を捺したり、印鑑証明書を取得したりしなくて良くなるからね。
遺言執行者を定めておけば、認知症のおばさんや、連絡のつかない相続人から協力して貰えなくても財産承継手続きを進めていくことができるよ。
そうなのか。
それなら、遺言書があれば、妻のD子さんは安心だな。
今度、C男兄さんに遺言書を真剣に考えるよう言っておくか。
ところで、遺言書を残さずに亡くなってしまった場合、相続人の中に認知症が進行してしまった人がいると相続手続きができなくなってしまうの?
そうだね。基本的に財産管理できる程度の判断力が無いと遺産分割などができないので、そのような人のために、「成年後見制度」を利用することができるよ。
「成年後見人」という代理人が、自分で判断することの難しい本人に代わって遺産分割を進める事ができるようになるんだ。
成年後見制度か。。。
妹にも関係してきそうだし、覚えておかないといけないな。
ウチ(江戸川家)は家族仲いいから、何も準備しなくて大丈夫よね?
こんな話をしていたら何だか不安になって来ちゃった。
はは、俺が死んだ後の話か?
勘弁してくれよ、と言いたいが、ちゃんと考えないとだよなぁ。
この自宅は、同居してくれている長男のF介が相続すると思っているんだが、
それは家族の皆にも以前から言っているし、それで良いだろ?
うん。
自分はもうローンでマイホームを買っているし、この家は兄貴(F介)が相続すると良いよ。
じゃあ、別に揉めることは無さそうだな。
でも、G子の旦那さん、お金に細かい人だから「遺産の自宅を売って、法律の割合どおり他の兄妹にも分けろ」とか言ってきたら困るね。
G子、旦那さんの意見に従っちゃうところあるし。。。
確かに、G子が「ハンコを捺さない」とか言い出すと、やっかいなことになるね。。。
遺産分割でF介が自宅を相続するためにはG子も含めた相続人全員で実印を捺す必要があるんだ。
ハンコを捺す捺さないで揉めるとか、考えただけでうんざり。。。
俺達が死んだ後も、3人仲良くして欲しいな。
俺も、後で子供達が揉めないように遺言書を作っておいた方が良いだろうか。
父さんは遺言を書くとしたら、自分の財産をどう相続させたいの?
やはりこの自宅は、長男F介に相続させるかな。
俺の財産の大半を渡すことになるが、F介の家族が同居してくれて、かなり助けられているからな。
もし俺が死んでも、自宅でしっかり母さんの面倒を見てくれるだろうし、F介が相続してくれることが、俺にとっても一番安心だ。
私としても、F介夫婦や孫がずっと一緒に住んでくれたら嬉しいわ。
(母さんに配偶者居住権を指定することもできるようになるけど、ウチには必要なさそうだな。相続税もかからなそうだし。)
F介に自宅を相続させる代わり、銀行の預貯金は、母さん、G子、H介の3人に残すようにするか。
あ、H介には新居の購入費用を援助した分、お前の分は減らしても大丈夫か?
自分はそれでまったく問題ないよ。
G子達は、この家をF介だけが相続することに納得しないかもしれないから、その父さんの想いを、遺言書に“付言(ふげん)”として残した方が良いかも。
G子には遺留分もあるし、変に揉めないようにしないとね。
“付言(ふげん)”。。。
遺言書に家族へのメッセージを含めることもできるのか。
G子にちゃんと俺の想いが伝わるよう、遺言書を作る場合は、含めておいた方が良いな。
ところで、今の時代、遺言書を書いただけでは、今後も安心とは言い切れないからね。
えっ、そうなの?
父さんはまだまだしっかりしているけど、将来『認知症になってしまうリスク』もしっかりと考えないといけないよ。
認知症になってしまうリスク。。。?
(。。。あまり考えて無かったが、俺も世間的には高齢者だし、確かに他人事では無いよな。)
お父さんが将来認知症等になって自分で財産管理が出来なくなると、色々と問題が生じることが多いんだ。
この問題については、遺言を用意してもカバーできないんだよね。
そうなのか。
具体的にはどんなことが問題になるんだ?
認知症になってしまうと、財産が凍結されてしまうんだよ。
「父さんが亡くなるまでの間」、預貯金は引き出せないし、不動産は、売ったり貸したりすることもできないし。。。
そのときは妻である私が代わりに手続きできないの?
夫婦だとしても法律的には別人だから、不動産取引はできなくなるし、銀行窓口の手続きもかなり制限されるね。
最近は、親族の不正や、問題となったときに責任追及されることを避けて、どこの機関も本人確認がどんどん厳しくなっているよ。
それは困るかもな。。。
何か財産凍結に対応する良い方法はないのか?
いざというときは、さっき言った成年後見制度を使うこともできるけど、色々と制約も多いんだよね。
今から準備するのであれば、ウチの司法書士事務所では『家族信託』をお勧めしているよ。
父さんがしっかり判断できる時期に契約をすれば、『家族信託』の仕組みを使用して、生存中の認知症にも備えた、自由度が高く負担も少ない財産管理を準備することができるんだ。
もし、既に判断能力が十分ではない場合には、本人は新しい法律行為ができないことになる。
なので、家族が申立できる成年後見制度は利用できるけど、本人が法律行為をしなければいけない家族信託や遺言を準備することが難しくなるね。
相続や認知症の対策といっても、色々あるのねぇ。。。
今までの話をまとめると、
・死後の財産の行き先について指定するのが遺言書。
・今はしっかりしているけど、将来の認知症リスクに備えたい方が利用するのが、家族信託。
・既に認知症などになってしまい、財産管理ができない人の為に利用できるのが、成年後見制度。
あくまでイメージして貰う為のざっくりとした説明なので、本当はもっと補足すべき事もあるんだけど、長くなっちゃうからこれぐらい理解して貰えれば十分だと思うよ。
(詳細は、リンク先もご確認)
また近いうちに、F介とG子も呼んで、将来のことを一度家族で話し合ってみよう。
もし良ければ、不安に感じている点を、ウチの事務所(司法書士)に相談してみてね。
相談前に自分で法律や制度をしっかり理解していなくても、専門家から見たその家族に合う対策を提案してくれるよ。
江戸川区の司法書士・行政書士ならピクシスへ。
お電話の受付 : 平日9時〜18時
インターネットからのお問合せはこちら
インターネットの受付: いつでも(24時間)受付
【主な取扱業務】
・相続相談・遺産承継(遺産整理・相続放棄・遺産分割)
・相続・認知症リスク対策(家族信託・遺言書作成・成年後見)
・不動産登記(名義変更(相続・贈与・売買)・抵当権抹消)
・会社登記(会社設立・役員変更・本店移転)
地元江戸川区や都営 新宿線沿線(船堀・東大島・篠崎・一之江・瑞江・本八幡・大島~)の方をはじめ、江東区・市川市・墨田区・葛飾区・浦安市の方などから広くお問合せ・ご利用いただいております。相続や登記のお悩み、ご相談は船堀駅から徒歩4分のピクシスへ。